＜本文は出版図書「こころ理論」の一部を抜粋したものです＞

人間であれば誰もが心理問題を持っているが、この心理問題は意識と無意識が感情を処理する過程において発生する。しかし意識と無意識において感情を処理できなくなると認識心理、記憶心理、表現心理のうち、どれか一つの心理に異常をきたし、意識と無意識が感情を正常に処理できるようにする。この時、認識心理が異常にはたらくと認識障害、記憶心理が異常にはたらくと感情記憶障害、表現心理が異常にはたらくと表現障害が発生する。これらを心理障害と言う。

心理障害はポジティブ感情とネガティブ感情が心の幸福を追求する心理の基準に合わなくなると心理問題が発生し、意識と無意識が正常に処理できない状況になった時に発生する。

ちなみに、心理障害は「精神障害の診断と統計マニュアル」のように精神医学と生理学の身体研究を通して心理を診断する。医学、科学、生理学、脳科学の身体の観点から心理障害を研究した結果である。脳、神経、ホルモン、血液、その他身体のはたらきを通して心理を研究するのと同じである。これらは目に見えるもので測定し、検証できる身体を研究することであり、目に見えず、推定し検証することのできない心理を研究しているものではない。つまり心理の観点から身体の影響を研究するのではなく、身体の観点から心理の影響を研究するものである。

そのため医学と科学は発展しているが、心理学は意識と無意識で心理を分離した以降は発展できないまま足踏み状態である。医学と科学は身体という基準があるが、心理学は心理の基準がないため医学と科学に振り回されているのが現状である。

精神医学においては身体を基準にして心理を研究する。脳、神経、ホルモンと感情との関連性を研究し、治療方法を開発しているが、心理学においては精神医学の研究に基づいて意識と無意識を関連付けて研究する。つまり精神医学と心理学の両方が身体の基準から感情を研究している。結局はすべての観点が身体を基準にしており、心理の基準を見付けられない原因となっている。

心理の問題により身体の問題が発生する「身体化現象」は精神医学において研究されている。ただ精神医学では心理の問題とは言わず、精神の問題である脳、神経、ホルモンの問題だとする。つまり心理学ではなく、精神医学の観点である。ところが身体の問題によって心理の問題が発生する「心理化現象」は研究されていない。この「心理化現象」は、既存の精神医学ではない概念であり、こころ理論において新しい概念として命名したものである。

このように新しい概念を研究したのは、精神医学の観点から見ると身体の問題である脳、神経、ホルモンなどに問題があって、これらが感情の問題として現われたものだからである。しかし精神医学では研究することはできないが、身体の問題によって心理の問題が発生する「心理化現象」は心理的な観点において存在している。それでこころ理論を体系化した後、心理の基準と原理を作り、「身体化現象」と「心理化現象」を治療する方法を開発できた。

心理問題が身体問題に進行する「身体化現象」、身体問題が心理問題に進行する「心理化現象」は身体である脳、神経、ホルモンによる感情では解釈することはできず、治療することもできない。したがって現存する心理治療法がない。「身体化現象」と「心理化現象」は心理治療が必要だが、単純に脳、神経、ホルモンの概念だけでは心理治療が不可能である。心理の概念として治療してこそ「身体化現象」と「心理化現象」が治療できる。このように身体の治療である医学と同じように心理の治療である心理学が存在する。

身体の問題は医師が診断し治療するが、心理の問題は心理専門家が診断し治療しなければならない。医師と心理専門家は互いが相互補完的な関係として身体と心理を共に研究してこそ人間の幸福のための医療サービスが期待できる。医師は身体を治療するため、心理を軽視し、心理学者は身体を基礎として意識と無意識を研究した結果、医師より下に見られているとコンプレックスを持っているのも問題である。

身体の研究だけでは人間の心を知ることはできず、心理の基準と標準すらない心理では人間の心を知ることはできない。必ず心理において心理の基準と標準を定立しなければならない。それがこころ理論である。こころ理論によって心理の基準と標準を設定し検証したため、心理を研究するためには必ず心理の基準と標準である心について知らなければならない。

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